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あなたは本当に塩分を摂り過ぎていませんか?過剰な塩分への不安と減塩のコツ

なぜ、あんなにホッとするおなじみの味が健康に影響しているのか、不思議に思ったことはありませんか。日本では多くの人が、しょうゆ、みそ汁、漬物、加工食品など、日常的な食品から無自覚のうちに健康的な範囲を超える量の塩分をとっています。

とはいえ心配し過ぎる必要はありません。生活を大きく変えなくても、ほんの少し塩分を減らすだけで血圧を下げ、高血圧や脳卒中、心疾患の長期的なリスクを減らすことにつながります。

このコラムでは、好きな味をあきらめることなく、毎日のちょっとした工夫で大きな健康効果を生むためのヒントをお伝えします。

なぜ塩分の摂り過ぎが問題なのか

では実際、塩が毎食少しずつたまっていくと、体の中で何が起きるのでしょうか。塩分の多い食事を続けると、体は余分な水分を抱え込みやすくなり、血管の中を流れる血液量が増えます。この血液量の増加が血圧を押し上げ、その状態が日々、年単位で続くと血管に負担がかかり続け、脳卒中や心不全、腎臓病などにつながります。こうして、日本における塩分過多は、見た目以上に深刻な問題になっているのです。

日本を含む多くのアジア諸国では、加工食品やしょうゆ、みそなどをよく使う食文化の影響で、世界的に見ても塩分摂取量が高い水準にあります。普段食べている料理の中に「かくれ塩分」が多く含まれていることが少なくありません。そのため減塩は一時的な健康ブームではなく、優先的に取り組むべき課題とされています。健康日本21などの公衆衛生施策でも、高血圧予防や心血管リスク低減を目的に、減塩の具体的な指針や取り組みが積極的に推進されています。

つまり、メッセージは明確です。味を損なうことなく、少しずつでも塩分を減らすことが、健康を守るためにとても重要なのです。

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日本ではどのくらいの塩分が「摂り過ぎ」なのか

世界保健機関は、1日の塩分摂取量の目安を5グラム以下としています。一方、日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人の目標量は男性7.5グラム未満、女性6.5グラム未満とされています。

しかし、国の調査によると、こうした推奨値と実際の摂取量との間には大きなギャップがあり、日本人成人の8割以上が、自覚のないまま推奨量を上回る塩分をとり続けていると言われています。

なぜこれが問題なのでしょうか。推奨量を継続的に超えていると、高血圧や心血管疾患のリスクが高まります。たとえ1日あたり1~2グラム程度でも塩分を減らすことができれば、脳卒中や心疾患を減らせる可能性があるとされています。

日本の食生活の中で、塩分はどこに潜んでいるのか

研究によると、日本人の塩分摂取の大部分は、卓上の塩そのものよりも、調味料や普段の食事からきています。例えば次のようなものです。

加工食品とかくれ塩分

インスタント麺、レトルトスープ、加工肉製品、スナック菓子などには、意外なほど多くの塩分が含まれていることがあります。多くの市販加工食品には、味付けや食感、日持ちを良くするためにナトリウムが加えられているからです。一見ヘルシーに見える植物由来の食品や、すぐに食べられる豆腐製品、市販のソース類などでも、塩分が高いものがあります。

調味料・薬味

日本人のナトリウム摂取の約5分の1は、しょうゆなどの調味料だけで占められるとされています。これらの調味料に、ほかの塩辛い調味料やみそ汁などのスープ類、塩蔵の魚料理、漬物などが加わると、1日のナトリウム摂取量の6割以上を占めることもあります。

塩分を減らすための簡単な工夫

普段の習慣を少し変えるだけでも、食の楽しみを失わずに、塩分摂取量を目標値に近づけていくことができます。日本人の食事摂取基準や各種の健康増進計画を参考にしながら、個人や地域で取り組みやすい実践的なステップを意識してみましょう。

1.調味の仕方や料理の習慣を見直す

  • しょうゆやソースの量を控える:小皿に入れるしょうゆの量を少なめにして、料理にかけるのではなく「軽くつける」程度にとどめてみましょう。また、減塩しょうゆを選ぶのも一つの方法です。ナトリウム量が25~50%ほど少なくても、味は通常のものとほとんど変わりません。
  • 塩辛い汁物を減らす:ラーメン、うどん、みそ汁などは、だしやスープの素を少なめにしたり、スープを最後まで飲み干さないようにするとよいでしょう。野菜や豆腐、海藻などの具材を多く入れれば、塩分を控えながら満足感を得やすくなります。
  • 自炊の回数を増やす:外食や総菜、弁当は、見た目には分からないナトリウムが多く含まれていることがあります。自分で料理をすることで、調味料やソースの量を自分でコントロールしやすくなります。

2.減塩商品を選び、表示をよく確認する

  • 栄養成分表示をチェックする:食品を選ぶときは、塩分やナトリウムの表示を確認する習慣をつけましょう。1食分あたり、あるいは100グラムあたりの数値を比較し、あわせて「1食分の量」がどのくらいかも意識して選ぶと、長い目で見て大きな違いにつながります。
  • 減塩タイプを選ぶ:みそ、しょうゆ、スナック菓子、インスタント食品などは、減塩タイプの商品が多く出回るようになっています。いつもの商品を減塩タイプに切り替えるだけでも、無理なく減塩に近づき、社会全体の減塩目標にも貢献できます。

3.塩を足さずに「おいしさ」を引き出す

  • うま味を活用する:昆布、かつお節、干ししいたけ、トマト、うま味調味料(グルタミン酸ナトリウム)などのうま味成分を使うと、塩をたくさん加えなくても、しっかりした味わいを感じやすくなります。
  • 酸味や香りをきかせる:酢、柑橘類(ゆず、レモン)、しょうが、しそなどの香味野菜やハーブを加えると、料理の風味が引き立ち、塩分を控えても物足りなさを感じにくくなります。

4.外食や総菜・弁当を選ぶときの注意

  • 塩分の多い料理を控えめに:ラーメン、ソースがたっぷりかかった丼もの、一部の居酒屋メニューなどは、1品で数グラムの塩分を含むことがあります。頻度を減らしたり、シェアして食べるなどの工夫をしてみましょう。
  • 注文時にひと声かける:外食やテイクアウトでも、調味を完全に任せきりにする必要はありません。「タレ少なめ」「薄味で」などと頼んだり、卓上のしょうゆやソースを追加しないようにするだけでも、味はほとんど変えずに、ひそかに塩分を減らすことができます。

塩分にとくに注意したい人

すでに高血圧がある人、またはそのリスクが高い人、慢性腎臓病や糖尿病、心血管疾患を抱えている人は、より厳密な塩分管理による恩恵が大きいとされています。こうした人では、日本や国際的なガイドラインを踏まえつつ、自分に合ったナトリウム摂取量の目標を、医師や管理栄養士と相談して決めることが重要です。

自宅で血圧を測りながら少しずつ減塩を進めると、自分がナトリウムにどれくらい敏感かを知る手がかりにもなり、長く続けるモチベーションにもなります。減塩にあわせて、適正体重の維持、身体活動の習慣化、飲酒量の節度ある管理、野菜や果物を多くとる食生活などを組み合わせると、心疾患や脳卒中に対する予防効果はさらに高まります。

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Reference:

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Current dietary salt intake of Japanese individuals and risk of hypertension. Nature Hypertension Research. Published January 17, 2021. https://www.nature.com/articles/hr2014154

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Salt intake per dish in the Japanese diet. PMC – National Center for Biotechnology Information. Published December 14, 2021. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8727723/